5月は、少しだけ気持ちがフワッとした1ヶ月だった。
まだ仕事が始まっていない、いわば"人生最後の長期休暇(予定)"。そんな期間をどう過ごすか、どう過ごしてしまったかの記録。
後輩たちと飲みに行った
前々職で一緒に働いていた後輩たち(インターン時代の仲間)と、久々に飲みに行った。
一人はすでに立派な社会人で、もう一人も大学院を卒業して、見事に大手企業に就職。
二人とも昔から優秀だったけど、改めて話を聞くと、「もう雲の上の人たちじゃん」って思うくらい立派にやってる。自分よりもずっと年下なのに、すごいなぁと素直に感心した。
でも、彼らの話の中で「当時の◯◯さん(=自分)には本当にお世話になりました」と言ってくれたのが、なんだかすごく嬉しかった。
たった数ヶ月しか一緒に働いてなかったし、プロジェクトだって今の彼らにとっては小さな仕事だったかもしれないけど、それでもその経験が少しでも活きているなら、本当に報われる気持ちになる。
最近、友達以外と飲むときはあまり酔わないようになったけど、この日は久しぶりにテンションが上がった。
粗相してなければいいけど……(頼む、してないでくれ)。
だらけたようで、少し整った生活
5月は、とにかく時間があった。
もちろん次の職場に向けてキャッチアップしたり、準備したりもしたけど、フルタイムで働いているときと比べると、圧倒的に余白が多い日々だった。
時間があると、逆に「何もしない時間」が増えるという不思議。
本を1時間読んで、気づけばYouTubeを2時間見ている……みたいな生活をしてしまって、ちょっとした罪悪感も。
せめてと思ってギターも触ったりしたけど、モチベーションはなかなか安定せず。
それでも、月の後半には早寝早起きにシフトして、朝6時には自然と目が覚め、夜9時には眠くなる生活が定着。
3食しっかり食べる習慣が戻ってきたのもあって、体調はすこぶる良い。
「この生活、続けたいな」と思ったけど、まぁ、仕事が始まればまた変わっていくんだろうな。
映画、ドラマ漬けの毎日
時間がある分、ドラマもたくさん観た。ざっと振り返ると:
パーフェクトブルー
今敏監督の代表作。以前から名前は知っていたものの、観るのをためらっていた作品でしたが、ようやくこの機会に視聴しました。観終わった直後、しばらく何も言葉が出ませんでした。
まず何より、90年代特有のアナログな作画と色合いが、今の作品にはない独特の「空気」を生んでいて、それだけで世界に引き込まれました。決して派手ではないけど、細部にまで神経が通った作画は、現実と妄想の境界が曖昧になるストーリーと相まって、不安感や焦燥感を容赦なく煽ってきます。
物語自体も、人の内面の“見たくない部分”をグロテスクなまでにリアルに描いていて、観ていてずっと息苦しさがありました。主人公の心の揺らぎと、その周囲の人間の視線・期待・執着が、彼女自身の“自我”をどんどん侵食していく様が怖い。怖いけど、目を背けられない。
今敏監督の天才性にただただ圧倒され、正直、自分のような浅い人間が語っていいのかすらわからない。でもそれでも、「これはすごいものを観た」と強く思える映画でした。
アンナチュラル
「医療ドラマは正直そこまで…」と思っていた自分を完全に裏切った一作。法医学、というテーマの切り口が新鮮だったのもありますが、それ以上に、物語の組み立てがとても丁寧。1話完結のようでありながら、全体を通したテーマや伏線もきちんとあって、毎話見るたびにどんどん引き込まれていきました。
主演の石原さとみも、これまでの「華やかな女性」というイメージではなく、ものすごく自然体でリアルな人物を演じていて、その“人間味”がストーリーの核になっていたと感じます。
そして何より印象に残ったのは、主題歌の「Lemon」。昔から好きな曲でしたが、このドラマの最後に流れることで、曲の意味がまったく変わった。エモーショナルなメロディが、ストーリーの余韻と共鳴して、涙腺にじわっときました。こんなに「主題歌がドラマの一部として機能している」と感じたのは久しぶりです。
MIU404
アンナチュラルの世界線とつながっているということで、期待値高めで観始めました。結果、面白かったけど、正直アンナチュラルほどの衝撃は受けなかった、というのが率直な感想です。
テンポの良さと1話完結型の構成は非常に見やすく、キャラクターも魅力的でしたが、全体的に「エンタメ寄り」な印象が強くて、心に刺さるというより「楽しいドラマだったな」という感覚でした。
ただ、最終話で描かれた“コロナ禍”を背景にした現実世界との接続にはぐっと来ました。あの頃の空気感が確かにあったし、「自分たちが今生きている世界が、ちゃんと物語の中でも存在している」というメッセージ性を感じました。あと、綾野剛と星野源のバディ感がとても良かった。
ブラッシュアップライフ
今月観た中で、個人的には一番「良い意味で裏切られた」作品。
死んでしまった主人公が、人間に転生するために人生をやり直す…という、一見するとファンタジーっぽい設定なのに、中身はめちゃくちゃ地に足がついてる。笑いあり、日常あり、そして人生の選択肢にちょっとした温かさを感じる物語。観ていてすごく安心できる、でも最後には心にぽっと火が灯るような、不思議な後味がありました。
この作品のすごいところは、何度も人生をやり直すことで得る“人生のバグ技”みたいな要素を使いつつも、それを決して万能とは描かないこと。むしろ、「何回やり直しても自分の根っこは変わらない」とか、「人生って思い通りにはいかないけど、積み重ねるものなんだ」といった、温かくて地味に刺さるメッセージが込められていました。
自分も、来世があるならまた人間に生まれたいな、なんて思いながら観てました。
グランメゾン東京
正直、あまり期待していなかった作品でした。フレンチという自分にとって縁遠いテーマ、キムタク主演の“ザ・日曜劇場”感――どこか「王道の熱血ものだろうな」という先入観があったのですが、いい意味で裏切られました。
料理というテーマを通して、仲間と信頼を築き上げ、ゼロから三つ星を目指すというシンプルな構成ながら、それぞれの登場人物の過去や想いが丁寧に描かれていて、物語に厚みと説得力がありました。何より、料理という“作品”に全身全霊をかける姿が本当に美しい。料理がアートのように映る瞬間が何度もあって、「フレンチ行ってみたいな…」と思う自分がいました。
そして個人的に一番心を揺さぶられたのは、登場人物たちが日夜を問わず、究極のメニューを追求し続けるその姿勢。どんな逆境にあっても、自分の信じる味とチームを信じて走り続ける姿が、自分がなりたい“仕事人”の理想像に重なりました。
正直ここ最近、歳を重ねるごとに、仕事に対するモチベーションや熱量がほんの少しずつ、目に見えないくらいのスピードで落ちてきている感覚があります。忙しさや現実に慣れすぎて、いつの間にか「こなす」ことが目的になってしまう瞬間がある。
でも、このドラマを観て、「自分もまだ、仕事に心血を注ぐような働き方をしてみたい」「そんなふうに、自分の仕事に誇りを持ちたい」と強く思いました。夢や理想を追い求めて努力することが、かっこ悪いどころか、むしろかっこいいことなんだと再確認させてくれるドラマでした。
サイレント
ずっと気になっていた作品。特に、主題歌の「Subtitle」が好きで、「この曲のドラマなら観ないと…」という気持ちでようやく観ました。
結論から言うと、期待値が高すぎたせいか、少しだけ物足りなさを感じてしまった。でも、それはあくまで「ドラマに対する期待感」の問題であって、作品そのものは本当に丁寧に作られていて、クオリティは高かったです。
恋愛ドラマにしては珍しく、セリフの間や“言葉にできない感情”をすごく大切にしている感じがあって、それがとても心地よかった。音が聞こえないという設定もあって、沈黙の中に意味がある。そこに役者の演技力がちゃんと追いついているのがすごい。
特に目黒蓮の演技には脱帽でした。「アイドル枠」と思って観てたけど、完全にプロの俳優として成立していて、耳の聞こえない役柄もまったく違和感なく、自然体で感情を伝えていた。
物語としては大きな意外性がなかったかもしれませんが、だからこそ、「感情の機微」や「視線のやりとり」といった細部の積み重ねが、作品全体を丁寧に形作っていたと思います。
久しぶりに「ドラマって面白いな」と思った月だった。
社会人になるとこういう時間って本当に貴重なんだなって改めて感じる。
そして、来月からまた走り出す
気づけば、休みも終わり。
5月の初めは「まだ1ヶ月ある」と思っていたけど、過ぎてみれば一瞬だった。
おそらく、これが人生最後の転職(になるといいな)。
年齢的にもいろいろ考えるし、今回ばかりは「腰を据えるぞ」という気持ちで臨んでいる。
次の場所でも、焦らず、でも着実に、やっていこう。
きっとこの5月の時間が、後々、自分の土台になってくれると信じて。
おそらく人生最初で最後の朝ラーメン